2023/04/04 00:03

質のある暮らし、質のあるデザイン、質のある道具。

私たちの生活でよく耳に慣れ親しんだ「質」という言葉の一般的な使われ方は、「ものの価値の重点を、外ではなく中身に置く」ということです。


MOMOZONO Arte della Sartoriaでは、高品質なデザインの追求、中身あるもの作りを基盤とし、制作活動を行なっています。

本当に魂の宿る衣服には、アイデアの良し悪しに関わらず完成度があります。

服の完成度とは、その品質の完璧さがより多くの人に分析され、考察された作品です。

完成度の優れた質の高い服とは、仕上げ過程の中で何度も修正が重ねられ、十分な時間をかけて磨きがかかった製品のことです。


私は、芸術の宝庫イタリアのフィレンツェで、「質」についてを研究しています。

実験的なアート作品とルネサンスの歴史ある絵画では、同じ芸術の括りと言っても、お互いに全く異なるクオリティを兼ね揃えています。

時間がたっても変容しない美しさのあるもの、より多くの人に愛されるもの、他の人が真似したくなるようなアイデアやデザイン、このようなものには必ず「質」があります。


本当に美しいものに囲まれ、質のある生活に慣れているフィレンツェの人たちは、高品質なものしか受け付けません。特に私が、フィレンツェの大聖堂やルネサンスの実物の絵画などを、自身の身体の身近にして感じ取ったことは「本当に美しいものは誰が見ても美しい。」という、シンプルな集合的人間の民主性でもありました。



MOMOZONO Arte della Sartoriaでは、「素材の声を聞く」をコンセプトに、新しいデザインを考案する際には、必ずまず素材の本質を読み取るという作業を行います。


素材の本質を読み取るとは、シンプルに素材の性質を知るということです。

素材には、一般的に5感を使って認識できる、色、肌触り、風合い、重量感などの、目に見える性質以外にも、5感だけでは情報が読み取れない、目に見えない性質というのものが存在します。

素材の振動、周波数、歴史、記憶などがそれに含まれます。また、素材の目に見えない性質については、まだ不明なことが多く、現在さらに研究が続けてられています。


実験的で、脱構築的な衣服作りに着目し、新しい革新的な素材の使用方や、シンプルで無駄のない、ミニマルな縫製方を色々と研究した結果、最終的にたどり着いた、私のデザインの答えは「素材に聞けば分かるよ。」ということでした。


デザインを生み出す過程では、不思議なことに、アイデアをいくら素材に伝えて具現化しようとしても、その素材自体がオーダーを完全に拒否することがあります。

頭で考えるアイデアに捉われすぎ、素材本質の声に耳を傾けない場合、このようなことが起きやすいようです。素材が本来から、持ち合わせている機能性や性質をよく理解せず、素材の持ち味とあまりにもかけ離れたデザインを、強引に押し付けた場合、そこでアンバランスな摩擦がデザインに生じるからです。アイデアと、素材の相互バランスの調和が取れていないと、質の高い完成度には仕上がりません。素材の性質を軽視することなく、特性の価値をより上げるようなデザイン性が、質のある衣服作りの大前提だと思います。



私は大変ありがたいことに、アンティークやデッドストックという、ヨーロッパの古く味の沁みた素材をたくさん取り扱わせていただく経験をきっかけに、素材には、残された過去の記憶や、元の意図なども(私は素材の声と呼んでいます。)存在するということが分かりました。

このような、特に貴重な素材の見えない性質と、新しいアイデアの調和を上手く取るためには、陰と陽のバランスを統合するような、熟練した質の高い仕立て経験が必要です。特に実験的で新鮮なアイデアを、古い素材で具現化するには、柔軟性と観察的な経験もなくてはなりません。


すでに完成させられた、素材の美的バランスを一度完全に分解し、浄化しても、新しいアイデアが熟練した仕立てに伝わらない場合があります。古い考え方が作業の邪魔をすることがあるからです。今まで使われていた、高品質という言葉の間違ったレッテルが、新しいアイデアや技術をタブーだと捉えていた過去があるからです。時には、作業場全体の古い固定概念を完全に手放して、全く新しい観念と方向性に、ムードを書き換えることも大切です。私は、作業場の模様替えを頻繁に行うことで、制作のエネルギーを常に新しく動かすという工夫もしています。

古いアイデアを新しいものに書き換えるということで、作業全体のエネルギーと素材自体に、今まで考えもつかなかったような新しいビジョンや、美的センスがバランスよく自然に浸透しやすくなるのです。



ここで注意してほしいのは、新しいアイデアを出す前には、必ず古いアイデアを消去する必要があるということです。

素材本質の声を聞くためには、素材の浄化は不可欠です。特に古い素材には、いらなくなった不必要な記憶や誰かの古い感情も付着していることがあります。

私はそういう場合は必ず、事前に高温で湯洗いしたり、太陽の光で数時間の日光消毒をします。ほとんどの生地は、高温のアイロンスチームで、素材の中に付着した湿気を蒸発させると、簡単に浄化できます。

私は、基本的にどのような裁断作業であっても、作業前には、仕事場とその周辺を徹底に掃除をしてから裁断に入ります。アロマオイルやお香で、場の浄化を行うこともあります。きれいで整っている環境だと、思考がスッキリして気分よく作業が進みます。また、新しい高質なスピリットも作品に入りやすくなります。


新しいものだろうが古いものでも、生地には裁断前からすでに魂が入っています。その魂に敬意を払い協力し合えば、それがいくらどのような魂であったとしても、その後の味方になってくれます。自身の直感を心から信頼し、スピリットにただ作業を任せるということで、最終的な仕上がりが思った以上に優れているということがあります。


私たちデザイナーの役目は、素材の魂の特性をいかに生かして活用するかです。素材の自体の価値を、深くよく考慮され作られた衣服は、やはりその「質」が全く異なります。


また、もし生地がアイデアを嫌がっているようなことがあるなら、現実的にも仕立て作業に強く影響が生じます。頭がぼーっとして、身体が重くなり作業が遅くなったり、ハサミが一時期紛失したり、ハサミを入れても通りづらいなどの不思議な現象が起こる場合もあります。このような場合、強引に作業を進めても絶対に上手くはいきません。アイデアを練り直す必要があると、本当に「質」のある生地なら教えているのです。



私はデザイナーの仕事とは、素材の生の声をいかに理解し、その特性を現代のニーズに合わせ、どれだけ適切に活用することができるかだと思っています。

もの作りの上で、完成度が高い、本当に「質」の高いデザインにたどり着くためには、完璧さを磨き上げるために、幾度とない失敗を何度も重ね、どうしようもないような壁にも直面します。試行錯誤に探究を続けた結果、最終的に到達する「美」の頂点にこそ「質」の本質が隠されているのだと、私は仕立ての経験で知りました。


新たな作品を世に生み出すためには、時には素材が持ち合わせる記憶や特性をリセットし、全く別の角度からの提案も必要です。それには、アートの概念であったり、モダン建築物であったりとインスピレーションとなる対象も様々です。クリエイティブな分野では、最終的な質の高い作品を作るという意味では、デザインのコンセプトやもの作りの哲学には、それぞれみんなあまり変わりがありません。どの分野のコンテンポラリーデザインも、結局はどれも同じようなメッセージ性と方向性を持ち合わせています。お互いの現代的で知的なインスピレーションを、別の角度から影響し合い複雑に繋がっているのです。


素材の記憶をリセットするいうことは、素材の元の声を無視することとは違います。

どの素材も、もとを辿ればそこには機能性と役割があって作られています。世界中の文化の歴史でそれぞれ培った、素材の観察、研究記録を統合させることが、未来デザインに今世界的に求められています。


現在の科学知識では、素材には周波数があり、それぞれの波動が違う結果も出ています。

このような新しい科学的、量子力学的な発見は、知らず知らずに文化発展し続けた、素材の全く違う捉え方や、見方を指し示し、従来の素材の価値に大きな変容の方向づけを確定しています。


素材は、素材が生まれた土地の環境と特に密接に関係しています。私が取り扱っている素材は、それぞれの生産地を必ず把握するようにしています。扱う素材が、もともとどのような使用目的のために生産されたのかを知ることで、気づかなかった隠れた機能性なども発見することができます。生地には、それが製造されることになった理由が必ずあります。人類文化学的な研究からは、それぞれの素材は製造、使用目的などが土地によって異なり、土地の気候に適した素材が存在し、製造の歴史を持っています。

例えば、一概には言い難い点もありますが、イギリス製のウールは、気候の寒さに適応するために若干分厚く、硬い性質があるので、ハリのある際立ったシルエットを仕上げるのに使いやすいです。その反面、イタリア製のウールは、暖かい気候に適応するために非常に柔らかく、なめらかな肌触りが特徴なため、丸みの帯びた、落ち感があるシルエットに仕上げる際に非常に適しています。


私は、特にデッドストックの生地を多く取り扱う中で、現在では再製造不可能な、過密で質の高い素材の特性をいかに生かすことができるかに重点を置くようになりました。

ドイツの哲学者カール・マルクスは「質とは、労働力に比例する。」と提唱しています。質の高い製品を生み出すのに、素材が作られるのに費やされた労働力を上手く利用することは、優れた作品作りにも繋がります。


私の仕立ての仕事とは、素材が持つ本来の魂を、分裂して裁断、そしてそれらを新しく複数の魂たちへと作り替える作業です。

本来の仕立ての作業とは、素材からの信頼関係があってこそ成り立ちます。


私が提供する衣服にはスピリットが入っています。彼らは天使です。

着用していただくお客様の守護霊となって、お客様の身を優しく静かにお守りいたします。



これからも、新しいご縁が生まれますことを、益々楽しみにしています。

最後まで読んでいただきまして、どうも誠にありがとうございました。

敬具


MOMOZONO Arte della Sartoria